]> EPUB Media Overlays 3.0(日本語訳版)

この文書は「EPUB Media Overlays 3.0」を日本語訳したものです。最新の文書は http://www.idpf.org/epub/30/spec/epub30-mediaoverlays.html です。原文もしくは最新の情報を参照したい場合は、 EPUB Media Overlays 3.0 を参照ください。

この日本語訳は参考です。公式な文書ではありません。翻訳・解釈の正確性を保証しておりません。
また本文内の訳注は翻訳者の主観による補足です。

1.3. 用語にあげられている名称は本文中でも基本的に原文のままとした。

公開日:
2012-07-07
改訂日:
2013-04-05
翻訳者:
Wataru Yoshimura
校正者:
Fumihiro Kato

EPUB Media Overlays 3.0

2011年10月11日 勧告仕様

この版
http://www.idpf.org/epub/30/spec/epub30-mediaoverlays-20111011.html
最新版
http://www.idpf.org/epub/30/spec/epub30-mediaoverlays.html
前の版
http://www.idpf.org/epub/30/spec/epub30-mediaoverlays-20110908.html

前回のドラフトからの変更点の差分は、このリンクで入手可能である。

この文書(いくらかの規範的な訂正を含むかもしれません)のために、正誤表(英語)を参照されたい。

Editors

Marisa DeMeglio, DAISY Consortium

Daniel Weck, DAISY Consortium

目次

1. 要約
1.1. 目的とスコープ
1.2. 他の使用との関連性
1.3. 用語
1.4. 適合性
2. Media Overlay Document の定義
2.1. 前置き
2.2. コンテンツの適合性
2.3. Reading System の適合性
2.4. Media Overlay Document の定義
2.4.1. smil 要素
2.4.2. head 要素
2.4.3. metadata 要素
2.4.4. body 要素
2.4.5. seq 要素
2.4.6. par 要素
2.4.7. text 要素
2.4.8. audio 要素
3. Media Overlays の制作
3.1. 要約
3.2. EPUB Content Document との関係
3.2.1. 構造
3.2.2. 粒度
3.2.3. 埋め込まれた音声と動画
3.2.4. テキスト読み上げ
3.3. 意味の変化
3.4. スタイル情報の関連付け
3.5. パッケージング
3.5.1. Media Overlays を含める
3.5.2. Media Overlays のメタデータ語彙
4. 再生の動作
4.1. Media Overlays の読み込み
4.2. 基本的な再生
4.2.1. タイミングと同期
4.2.2. 音声のレンダリング
4.2.3. EPUB Content Document 要素のレンダリング
4.3. EPUB Content Document との相互作用
4.3.1. ナビゲーション
4.3.2. 埋め込まれた音声と動画
4.3.3. テキスト読み上げ
4.4. 読み飛ばし機能と回避機能
4.4.1. 読み飛ばし機能
4.4.2. 回避機能
A. Media Overlays スキーマ
A.1. Media Overlays スキーマの使い方
B. クロック値の例
C. 謝辞と貢献者
参照・参考

> 1 要約

> 1.1 目的とスコープ

このセクションは参考情報である。

本仕様、EPUB Media Overlays 3.0 は、EPUB Content Document と同期する音声表現用に、[SMIL](同期マルチメディア統合言語)、Package DocumentEPUBR Style Sheet、および EPUB Content Document の使用方法を定義する。

本仕様は EPUB 3 を構成する関連仕様の一つである。 EPUB 3 は XML や Web 標準に基づいたデジタル出版物の交換や配信形式の第 3 版である。本仕様書は EPUB 3 を構成する以下の他の仕様と共に読み、理解することになっている:

  • EPUB 3 Overview [EPUB3Overview] は EPUBの有益な概要と、残りの EPUB 3 文書群のロードマップを提供する。EPUB 3 Overview は最初に読んでおくべきである(should)。

  • EPUB Publications 3.0 [Publications30] は出版レベルのセマンティクスと EPUB Publication のための包括的な適合性要件を定義している。

  • EPUB Content Documents 3.0 [ContentDocs30]EPUB Publication のコンテキストで使用するための XHTML、SVG と CSS のプロファイルを定義する。

  • EPUB Open Container Format (OCF) 3.0 [OCF3] は関連するリソースの集合を単一のファイル(ZIP)の EPUB Container にカプセル化するためのファイル形式と処理モデルを定義する。

> 1.2 他の使用との関連性

このセクションは参考情報である。

本仕様は Media Overlay Document の定義で定義された EPUB Media Overlays の要素と属性の派生元である [SMIL] のサブセットに依存する。

> 1.3 用語

EPUB Publication (or Publication)

この仕様とその兄弟仕様によって定義されるように)一組の相互関係のあるリソースから成っていて、EPUB Container でパッケージされている論理的な文書のエンティティ。

Publication Resource

コンテンツまたは EPUB Publication のロジックと表示に関する命令を含んでいるリソース。このリソースがない場合には、出版物は Author の意図したとおりに表示されないことがある。Publication Resource の例としては Package DocumentEPUB Content DocumentEPUB Style Sheet、音声、動画、画像、埋め込みフォントとスクリプトが含まれている。

Package Document 自身を除いて Publication Resource は manifest [Publications30] に記載されなければならず(must)、Publication Resource の位置 [Publications30] で特に指定がない限り EPUB container ファイルにバンドルする必要がある。

Publication Resource でないリソースの例としては、Package Document の link [Publications30] の外で解決する外部へのハイパーリンクで識別されるものが含まれている。(例えば [HTML5]a 要素の href 属性)

EPUB Content Document

EPUB Content Document の定義(XHTML または SVG)の1つに従う Publication Resource

EPUB Content Document は Core Media Type であるため、フォールバック [Publications30] を提供することなく EPUB Publication に含まれていてもよい(may)。

XHTML Content Document

XHTML Content Documents [ContentDocs30] で定義されている [HTML5] のプロファイルに準拠する EPUB Content Document

XHTML Content Document は、[HTML5]XHTML syntax を使用する。

SVG Content Document

SVG Content Documents [ContentDocs30] で表現された制約に準拠した EPUB Content Document

EPUB Navigation Document

EPUB Navigation Documents [ContentDocs30] で表される制約に従い、人間と機械が読み取り可能なグローバルなナビゲーション情報を含むのに特化した XHTML Content Document

Core Media Type

Publication Resource 型のセットは、それに対するフォールバックは必須ではない。詳細については Publication Resources [Publications30] を参照されたい。

Package Document

Package Documents [Publications30] で定義されているとおり、EPUB Publication について文献の構造化メタデータをもたらしている Publication Resource

Manifest

EPUB Publication を構成するすべての Publication Resource のリスト。

詳細については manifest [Publications30] を参照されたい。

Spine

Publication のデフォルトの読み上げ順序を表す Publication Resource一般的EPUB Content Document の順序付きリスト。

詳細については spine [Publications30] を参照されたい。

Media Overlay Document

この仕様で定義された同期再生を提供するために録音済みの音声ナレーションを XHTML Content Document と関連付ける XML ドキュメント。

Text-to-Speech (TTS)

合成音声を用いて人工的な人間の言葉のような EPUB Publication のテキストコンテンツのレンダリング。

EPUB Style Sheet (or Style Sheet)

CSS のプロファイルに準拠する CSS スタイルシートは EPUB Style Sheets [ContentDocs30] で定義されている。

Viewport

EPUB Publication の内容が視覚的に User に与えられる EPUB Reading System の領域。

CSS Viewport

CSS でスタイルされたコンテンツを表示できる Viewport

EPUB Container (or Container)

[OCF3] で定義されている EPUB Publication 用 ZIP ベースのパッケージングと配布のフォーマット。

Author

EPUB Publication(必ずしも、それが含まれるコンテンツとリソースの作者であるというわけではない)の制作に対して責任がある人または組織。

User

EPUB Reading System を使用して EPUB Publication を消費する個人。

EPUB Reading System (or Reading System)

この仕様書と sibling specifications と方法の準拠で User に提示するために EPUB Publication を処理するシステム。

> 1.4 適合性

この文書内のキーワードは"MUST"、"MUST NOT"、"REQUIRED"、"SHALL"、"SHALL NOT"、"SHOULD"、"SHOULD NOT"、"RECOMMENDED"、"MAY"、"OPTIONAL"は [RFC2119] の記述に従って解釈される。

この仕様のすべてのセクションは規定である。但し"このセクションは参考情報である"という参考情報状態ラベルで識別される箇所を除く。セクションと付録への参考情報状態の適用は、含まれる可能性のあるすべての子コンテンツおよびサブセクションに適用される。

この仕様のすべての例は参考情報である。

> 2 Media Overlay Document の定義

> 2.1 前置き

このセクションは参考情報である。

同期する音声ナレーションを組み込んだ本は主要な電子書籍、教材、印刷物を読むことのできない人向けに提供される電子書籍で見つけることができる。EPUB 3 では、これらの種類の本は録音済み音声ナレーションのタイミングや、それを EPUB Content Document マークアップにどう関係付けるかを記述するために Media Overlay Document を用いて作成される。Media Overlays のファイル形式は、XML でマルチメディア情報を同期表現する W3C 勧告の SMIL のサブセットで定義される。

Media Overlays の機能を EPUB Reading System が機能をサポートしていない場合は無視するよう設計されている。EPUB Publication に Media Overlays を含めることは“通常の”EPUB Publication の出版物を表示する Media Overlay 非対応の Reading System の能力に影響を与えない。

この仕様の将来のバージョンは動画メディアをサポート(例えばテキストと手話を同期する本)するかもしれないが、現バージョンは EPUB Content Document に含まれる音声メディアの同期のみサポートする。

> 2.2 コンテンツの適合性

Media Overlay Document は次の条件をすべて満たしていなければならない(must):

Document のプロパティ

> XML 適合性 [Publications30] で定義された XML 文書の適合性の制約を満たしていなければならない(must)。

> 付録 A, Media Overlays スキーマで定義されている Media Overlays のスキーマに対して妥当であること、および Media Overlay Document の定義で表現されるすべてのコンテンツの適合性の制約に準拠しなければならない(must)。

> 構造で提示されたように関連付けられている EPUB Content Document の構造を反映しなければならない(must)。

> Author埋め込まれた音声と動画で述べられているとおり、EPUB Content Document に埋め込まれた音声とビデオのコントロールする記述の使用を避けるべきである(should)。

> 意味の変化に記載されているとおり、適切なセマンティックマークアップを使うべきである(should)。

> EPUB PublicationPackaging に示されるようにパッケージしなければならない(must)。

File のプロパティ

> Media Overlay Document のファイル名はファイル拡張子の .smil を使用すべきである(should)。

> 2.3 Reading System の適合性

EPUB Reading System の Media Overlays のサポートは省略可能である。Media Overlays をサポートしている Reading System は次の条件をすべて満たしていなければならない(must)

Media Overlay をサポートしていない Reading System は以下の基準に対処しなければならない(must)。

  • > manifest item 要素の media-overlay 属性と media-type 属性値が application/smil+xml の manifest item 要素の両方を無視しなければならない(must)。

> 2.4 Media Overlay Document の定義

特に指定のない限り、このセクションで定義されているすべての要素 [XML] は名前空間 http://www.w3.org/ns/SMIL [XMLNS] である。

> 2.4.1 smil 要素

smil 要素は全ての Media Overlay Document のルート要素でなければならない(must)。

要素名

smil

使用方法

smil 要素は Media Overlay Document のルート要素である。

属性
version [必須]

Media Overlay に準拠する [SMIL] 仕様書のバージョン番号を指定する。

属性は、このバージョンの仕様に準拠していることを示すための値に 3.0 を持たねばならない(must)。

id [省略可]

要素の ID [XML] はドキュメントのスコープ内で一意でなければならない(must)。

epub:prefix [省略可]

追加のメタデータ語彙接頭辞を宣言する。

詳細については意味の変化を参照されたい。

内容モデル

記述順序: head [省略可], body [必須]

> 2.4.2 head 要素

head 要素は Media Overlay Document 内のメタデータのコンテナであり、0以上の子 metadata 要素で構成される。

要素名

head

使用方法

head 要素は smil 要素の省略可能な最初の子要素。

属性

なし

内容モデル

metadata [0または1つ]

この仕様は Media Overlay Document で必要とするメタデータのプロパティを定義していないとして head 要素は省略可能である。

> 2.4.3 metadata 要素

metadata 要素は Media Overlay Document のメタデータを表す。metadata 要素は任意のメタ情報の構造化言語で記述されたメタデータを含めることができる拡張ポイントである。

要素名

metadata

使用方法

head 要素の子。

属性

なし

内容モデル

任意の名前空間からの [0個以上] の要素。

本仕様は Media Overlay Document に発生しなければならず(must)、メタデータのプロパティを定義しない。metadata 要素は特別なメタデータの要件により提供される。

> 2.4.4 body 要素

body 要素は Media Overlay Document に含まれているプレゼンテーションのための開始地点である。それは parseq 要素の主要なシーケンスを含んでいる。

要素名

body

使用方法

body 要素は smil 要素に必須な二番目の子要素。

属性
epub:type [省略可]

EPUB Content Document 内の対応する要素の構造的な意味の語句。

値はプロパティ [Publications30] の種類が空白で区切られたリストでである。詳細については意味の変化を参照されたい。

id [省略可]

要素の ID [XML] はドキュメントのスコープ内で一意でなければならない(must)。

epub:textref [省略可]

対応する EPUB Content Document の相対的な IRI 参照 [RFC3987] は、[XPTRSH] のように明確な要素を参照するフラグメント識別子を含んでいる。

内容モデル

記述順序: seq [0個以上] または par [0個以上]

少なくとも一つの par または seq が必要である。

> 2.4.5 seq 要素

seq 要素は順番にレンダリングされるメディアオブジェクトが含まれている。

要素名

seq

使用方法

1つ以上の seq 要素は bodyseq 要素の子に出現してもよい(may)

属性
epub:type [省略可]

EPUB Content Document 内の対応する要素の構造的な意味の語句。

値はプロパティ [Publications30] の種類が空白で区切られたリストである。詳細については意味の変化を参照されたい。

id [省略可]

要素の ID [XML] はドキュメントのスコープ内で一意でなければならない(must)。

epub:textref [必須]

対応する EPUB Content Document の相対的な IRI 参照 [RFC3987] は、[XPTRSH] のように明確な要素を参照するフラグメント識別子を含んでいる。

内容モデル

記述順序: seq [0個以上] または par [0個以上]

少なくとも一つの par または seq が必要である。

> 2.4.6 par 要素

par 要素は並列にレンダリングされるメディアオブジェクトが含まれている。

要素名

par

使用方法

0個以上の par 要素は bodyseq 要素の子に出現してもよい(may)

属性
epub:type [省略可]

EPUB Content Document 内の対応する要素の構造的な意味の語句。

値はプロパティ [Publications30] の種類が空白で区切られたリストである。詳細については意味の変化を参照されたい。

id [省略可]

要素の ID [XML] はドキュメントのスコープ内で一意でなければならない(must)。

内容モデル

記述順序: text [必須]audio [省略可]

audio 要素は音声や動画メディア(埋め込まれた音声と動画を参照)またはテキスト読み上げ (TTS) 経由でレンダリングされた対象となる原文のコンテンツを参照している兄弟 text 要素がある場合に限り省略可能である。

> 2.4.7 text 要素

text 要素は EPUB Content Document 内を参照する要素。text 要素は通常、テキスト要素を参照するだけでなく、他の EPUB Content Document のメディア要素(埋め込まれた音声と動画を参照)を参照することができる。

要素名

text

使用方法

par 要素の必須の子。

属性
src [必須]

対応する EPUB Content Document の相対的な IRI 参照 [RFC3987] は、[XPTRSH] のように明確な要素を参照するフラグメント識別子を含んでいる。

id [省略可]

要素の ID [XML] はドキュメントのスコープ内で一意でなければならない(must)。

内容モデル

> 2.4.8 audio 要素

audio 要素はオーディオメディアのクリップを表している。

要素名

audio

使用方法

audio または video メディアを参照している兄弟 text 要素である場合を除く par 要素の必須の子の場合に省略可能(埋め込まれた音声と動画を参照)である。

属性
id [省略可]

要素の ID [XML] はドキュメントのスコープ内で一意でなければならない(must)。

src [必須]

音声ファイルの相対的または絶対的 IRI 参照 [RFC3987]。音声ファイルは Core Media Types [Publications30] 表に記載されている音声フォーマットのいずれかでなければならない(must)。

clipBegin [省略可]

音声クリップの開始地点に一致する物理的メディアへのオフセットを記述するクロック値。

クロック値は SMIL クロック値のサブセットで、[SMIL] で定義されている。付録 B クロック値の例 を参照されたい。

clipEnd [省略可]

音声クリップの終了地点に一致する物理的メディアへのオフセットを記述するクロック値。

クロック値は SMIL クロック値のサブセットで、[SMIL] で定義されている。付録 B クロック値の例 を参照されたい。

終了位置の時系列オフセットは clipBegin 属性で指定された開始オフセットの後でなければならない(must)。

内容モデル

> 3 Media Overlays の制作

> 3.1 要約

このセクションは参考情報である。

出版物の録音済みナレーションは EPUB Content Document の一部のそれぞれに対応する音声クリップの連続として表すことができる。単一の音声クリップは、例えば、一般的に単一のフレーズや段落を表現するが、他のクリップや文書のテキストに対する相対的な順番を推測しない。Media Overlays は SMIL マークアップを使用し、EPUB Content Document 内の対応するテキスト(または他のメディア)に構造化された音声ナレーションを紐付けることにより、同期のこの問題を解決する。Media Overlays は、実際には、これらのクリップの再生順序を定義することを許可する SMIL 3.0 の単純化したサブセットである。

Media Overlays 構成するために使用される主要な SMIL 要素は body (主な再生順序のために使用される)、seq (再生順序)と par (並列再生)である。(これらと他の SMIL 要素のより詳細な情報は Media Overlay Document の定義を参照されたい。)

par 要素はオーバーレイの基本構成単位であり、EPUB Content Document のフレーズに対応している。要素は 1) フレーズのためのナレーションを含んだ音声クリップと 2) EPUB Content Document フラグメントに結びつけられたポインターという同期コンテンツの二つの重要な要素を提供する。par 要素はこの情報を表現する audio 要素と text 要素という2つのメディア子要素を使用する。par 要素は並列にこれら子要素を表現するので、音声クリップと EPUB Content Document フラグメントは同期プレゼンテーションの結果、同時に再生される。

text 要素の src 属性は IRI 参照によって EPUB Content Document の関連したフレーズやセンテンス、または他のセグメントを参照する。audio 要素の src 属性は一致する音声クリップの位置を同様に参照し、省略可能な clipBeginclipEnd 属性はクリップ内の特定のオフセットを示すために追加する。

次の例では、単一のフレーズまたはセンテンスの Media Overlays のマークアップを示している。

<par>                        
    <text src="chapter1.xhtml#sentence1"/>
    <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="23s" clipEnd="30s"/>
</par>

par 要素はフレーズまたはセンテンスの連続を形成するために順番に一緒に配置される。すべての EPUB Content Document の要素が、音声ナレーションに関連するだけの Media Overlays の par 要素に対応するとは限らない。

次の例では、フレーズの再生順序を含む基本的な Media Overlay Document を示している。body 要素は文書全体の主な再生順序として機能する。

<smil xmlns="http://www.w3.org/ns/SMIL"
      version="3.0">
    <body>
        <par id="par1">
            <text src="chapter1.xhtml#sentence1"/>
            <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="0s" clipEnd="10s"/>
        </par>
        <par id="par2">
            <text src="chapter1.xhtml#sentence2"/>
            <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="10s" clipEnd="20s"/>
        </par>
        <par id="par3">
            <text src="chapter1.xhtml#sentence3"/>
            <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="20s" clipEnd="30s"/>
        </par>
    </body>
</smil>

par 要素は部や章など、より複雑な構造を定義する seq 要素に追加することもできる(構造を参照)。

> 3.2 EPUB Content Document との関係

note

このセクションでは、EPUB Content DocumentXHTML Content Document と仮定する。Media Overlay は SVG Content Document で利用することができるが、再生の動作は一貫性のないものかもしれず、そのために相互運用性も保証されない。

> 3.2.1 構造

Media Overlay 要素の順序付けは EPUB Content Document の標準の読み上げ順序に一致しなければならない(must)。par 要素はフレーズを表し、seq 要素(シークエンス)は例えば section、aside、header および footnote などのネスト化された EPUB Content Document のコンテナを表している。子要素の seq は他の seq または par の要素でなければならない(must)。それぞれの seq 要素は IRI 参照によって一致する EPUB Content Document 要素を参照する epub:textref 属性を含まなければならない(must)。

次の例では、セクションのヘッダーとネスト化した図を含むサイドバーの両方を持つ章を表現したネスト化された seq 要素を含む Media Overlay Document を示している。

<smil xmlns="http://www.w3.org/ns/SMIL" 
      xmlns:epub="http://www.idpf.org/2007/ops"
      version="3.0">
  <body>

    <!-- a chapter -->
    <seq id="id1" epub:textref="chapter1.xhtml#sectionstart" epub:type="chapter">

      <!-- the section title -->
      <par id="id2">
        <text src="chapter1.xhtml#section1_title"/>
        <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="0:23:23.84" clipEnd="0:23:34.221"/>
      </par>

      <!-- some sentences in the chapter -->
      <par id="id3">
        <text src="chapter1.xhtml#text1"/>
        <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="0:23:34.221" clipEnd="0:23:59.003"/>
      </par>
      <par id="id4">
        <text src="chapter1.xhtml#text2"/>
        <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="0:23:59.003" clipEnd="0:24:15.000"/>
      </par>

      <!-- an informational sidebar -->
      <seq id="id5" epub:textref="chapter1.xhtml#sidebar" epub:type="sidebar">
        <par id="id6">
          <text src="chapter1.xhtml#sidebartitle"/>
          <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="0:24:15.000" clipEnd="0:24:18.123"/>
        </par>

        <!-- a figure within the sidebar -->
        <seq id="id7" epub:textref="chapter1.xhtml#figure">
          <par id="id8">
            <text src="chapter1.xhtml#photo"/>
            <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="0:24:18.123" clipEnd="0:24:28.764"/>
          </par>
          <par id="id9">
            <text src="chapter1.xhtml#caption"/>
            <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="0:24:28.764" clipEnd="0:24:50.010"/>
          </par>
        </seq>

        <!-- some sentences in the sidebar -->
        <par id="id10">
          <text src="chapter1.xhtml#sidebartext1"/>
          <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="0:24:50.010" clipEnd="0:25:28.530"/>
        </par>
        <par id="id11">
          <text src="chapter1.xhtml#sidebartext2"/>
          <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="0:25:28.530" clipEnd="0:25:45.515"/>
        </par>
      </seq>

      <!-- more sentences in the chapter (outside the sidebar) -->
      <par id="id12">
          <text src="chapter1.xhtml#text3"/>
          <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="0:25:45.515" clipEnd="0:26:30.203"/>
      </par>
      <par id="id13">
          <text src="chapter1.xhtml#text4"/>
          <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="0:26:30.203" clipEnd="0:27:15.000"/>
      </par>

    </seq>
  </body>
</smil>

seq 要素内のサイドバー、セクションのヘッダー、図、表組や注釈のようなグループ化した構造にする理由は、それらの開始位置と終了位置を再生する時に識別できるようにするためである。Reading System は、例えば長いサイドバーを読み飛ばしたり、改ページのアナウンスの解釈を停止させたり(読み飛ばし機能と回避機能を参照)、または例えば表組など一揃いの構造に合わせて読み取りのモードをカスタマイズするように、Publication のレイアウトにあわせて再生のオプションを提供できる。

次の例では、前述の Media Overlay の例に対応する EPUB Content Document を示している。

<html xmlns="http://www.w3.org/1999/xhtml" 
      xmlns:epub="http://www.idpf.org/2007/ops" 
      xml:lang="en" 
      lang="en">
    <head>
        <title>Media Overlays Example of EPUB Content Document</title>
    </head>
    <body id="sec1">
        <section id="sectionstart" epub:type="chapter">
            <h1 id="section1_title">The Section Title</h1>
            <p id="text1">The first phrase of the main text body.</p>
            <p id="text2">The second phrase of the main text body.</p>
            <aside id="sidebar" epub:type="sidebar">
                <h2 id="sidebartitle">The Sidebar Title</h2>
                <figure id="figure">
                    <img id="photo" 
                         src="photo.png" 
                         alt="a photograph for which there is a caption" />
                    <figcaption id="caption">The photo caption</figcaption>
                </figure>
                <p id="sidebartext1">A phrase in the sidebar.</p>
                <p id="sidebartext2">Another phrase in the sidebar</p>
            </aside>
            <p id="text3">The third phrase of the main text body.</p>
            <p id="text4">The fourth phrase of the main text body.</p>
        </section>
    </body>
</html>

> 3.2.2 粒度

このセクションは参考情報である。

Media Overlay text 要素 の src 属性は ID [XML] によって EPUB Content Document の要素を参照する。Media Overlay の粒度レベルは、どのように EPUB Content Document をマークアップしているかによって異なる。マークアップの最高のレベルが段落レベルであるならば、それは Media Overlay の同期が生み出すことのできる最も良いレベルである。同様に、小段落のマークアップに、例えば [HTML5]span 要素で表現されるフレーズやセンテンスなどが利用できるならば、それは Media Overlay 内で可能なより良い粒度である。より良い粒度は User に、単語またはフレーズによるナビゲーションやテキストの検索、同期再生のための正確な結果を与えるが、Media Overlay Document のファイルサイズは増加する。

> 3.2.3 埋め込まれた音声と動画

Media Overlay に関連付けられたすべての EPUB Content Document は、動画、音声、画像などの埋め込みメディアを含んでもよい(may)。Media Overlay text 要素は ID [XML] 値によって埋め込みメディアを参照する場合に使用してもよい(may)。

text 要素が音声を含む埋め込みメディアを参照する時、audio 兄弟要素は必須ではないが、一つ含むことは許可されている。

Author は Media Overlay の再生動作と衝突するかもしれないので、参照される埋め込まれた EPUB Content Document メディアの再生を制御するスクリプトを使用することは避けるべきである(should)。

> 3.2.4 テキスト読み上げ

本仕様は録音済み音声クリップに加えてテキスト読み上げ (TTS) の使用を許可している。audio 兄弟要素を含まない Media Overlay の text 要素が対象となる EPUB Content Document 内部の要素を参照する時、参照された要素のコンテンツは TTS を経由してレンダリングできなければならない(must)。たとえば、テキストの EPUB Content Document 要素もしくはテキストのフォールバックを含めることができる。

> 3.3 意味の変化

意味の変化を表現するために epub:type 属性 [ContentDocs30] を、Media Overlay の parseqbody 要素に付与してもよい(may)。

Media Overlay の epub:type 属性値は EPUB Content Document 内の epub:type 属性と同じように制限される。詳細については 意味の変化 [ContentDocs30] を参照されたい。

epub:type 属性は、セマンティック型が示す Reading System の適した動作を手助けする。これらの動作の例としては読み飛ばし機能と回避機能表組の読み上げモードである。

次の例では、sidebar を含む Media Overlay のセマンティックなマークアップを示している。

<smil xmlns="http://www.w3.org/ns/SMIL" 
      xmlns:epub="http://www.idpf.org/2007/ops"
      version="3.0">
    <body>
        <seq id="id1" epub:textref="chapter1.xhtml#sidebar" epub:type="sidebar">
            <par id="id2">
                <text src="chapter1.xhtml#sidebartitle"/>
                <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="0:24:15.000" clipEnd="0:24:18.123"/>
            </par>
            <par id="id3">
                <text src="chapter1.xhtml#sidebartext1"/>
                <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="0:24:18.123" clipEnd="0:24:38.530"/>
            </par>
            <par id="id4">
                <text src="chapter1.xhtml#sidebartext2"/>
                <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="0:24:38.530" clipEnd="0:25:00.515"/>
            </par>
        </seq>
    </body>
</smil>

本仕様は変更されていない語彙の関連付け [ContentDocs30] で定義された語彙の関連付けメカニズムを採用する。標準の語彙 [ContentDocs30] の用語は Overlay Document 内で接頭辞を付けずに使用しなければならない(must)。

> 3.4 スタイル情報の関連付け

現在再生している EPUB Content Document 要素の視覚的なレンダリング情報は著者が定義したクラスを使用して EPUB Style Sheet で表現してもよい(may)。著者が定義したクラス名はメタデータプロパティの active-class を使用して Package Document の metadata 内に宣言すべきである(should)。それによりクラス名が、Reading System によって発見可能となる。

この例では著者が現在再生している EPUB Content Document 要素にスタイルの情報を関連付けることができる方法を示している。

note

この例では -epub-media-overlay-active を使用しているが、任意のクラス名が許可されている。

Package Document のメタデータプロパティ active-class を使用して宣言された著者が定義した CSS のクラス名:

<meta property="media:active-class">-epub-media-overlay-active</meta>

著者が定義したクラス名を含んでいる EPUB Style Sheet:

.-epub-media-overlay-active
{
    background-color: yellow;
}

関連性のある EPUB Content Document の抜粋:

<span id="txt1">This is the first phrase.</span>
<span id="txt2">This is the second phrase.</span>
<span id="txt3">This is the third phrase.</span>

この例では、Reading System が、それが再生時にアクティブになった時、EPUB Content Document の各テキスト要素に著者が定義した -epub-media-overlay-active クラスを適用する。つまり、クラス名は要素がアクティブでない時は取り除かれる。User はその要素が再生中は黄色の背景でスタイル付された各 EPUB Content Document 要素を見ることができる。

> 3.5 パッケージング

> 3.5.1 Media Overlays を含める

Package DocumentManifest item 要素 [Publications30]media-overlay 属性を介して Media Overlay を指定してもよい(may)。Media Overlay はそれ自体 manifest item であり、ID [XML] によって参照されなければならない(must)。

次の例では、Package Document の manifest に Media Overlay を含む方法を示している。

<manifest>
    <item id="ch1" 
          href="chapter1.xhtml" 
          media-type="application/xhtml+xml" 
          media-overlay="ch1_audio"/>
    <item id="ch1_audio" 
          href="chapter1_audio.smil" 
          media-type="application/smil+xml"/>
</manifest>

Media Overlay を参照する Manifest item は Core Media Types [Publications30] に規定された application/smil+xml メディアタイプを持たなければならない(must)。

media-overlay 属性は、その参照された EPUB Content Document の manifest item にだけ付与されなければならない(must)。

単一の Media Overlay ファイルは複数の EPUB Content Document を参照してもよい(may)、しかし EPUB Content Document は複数の Media Overlay ファイルによって参照されてはならない(must not)。

すべての EPUB Content Document の manifest item が、それに関連付けられる Media Overlay を持っている必要があるというわけではない。EPUB Content Document が Media Overlay によって完全にまた部分的に参照されるならば、その時、その manifest item のエントリーは media-overlay 属性を介してこれを指定しなればならない(must)。

これは前方互換のための追加です:2.0 の Reading System はそれらを通常の方法で media-overlay 属性とプロセス文書を安全に無視してもよい(may)。

> 3.5.2 Media Overlays のメタデータ語彙

次の表は Package Document のメタデータに使用するためのプロパティのセットと参照可能な語彙の構成の両方を定義する。

この語彙を参照するためのベース IRI は http://www.idpf.org/epub/vocab/overlays/# である。

note

media: 接頭辞はパッケージメタデータ内のこれらのプロパティを内包するため [Publications30] で予約済みである。

> active-class
概要: 現在再生中の EPUB Content Document の要素に適用する著者が定義した CSS クラス名。
許容された値: xsd:string
個数: 0個以上
例: <meta property="media:active-class">-epub-media-overlay-active</meta>
> duration
概要: 全体のプレゼンテーションもしくは特定の Media Overlay の時間。オーサリング時に知られる音声クリップとして計算された特定の時間で、外部リソースと音声合成からライブストリーミングは除く。
許容された値:

クロック値。

クロック値は [SMIL] で定義されている SMIL clock values のサブセットである。付録 B クロック値の例を参照されたい。

個数: Publication とそれぞれの Media Overlay に1つのみ。
例: <meta property="media:duration">1:36:20</meta>
> narrator
概要: ナレーターの名前を指定する。
許容された値: xsd:string
個数: 0個以上
例: <meta property="media:narrator">Joe Speaker</meta>

Package Document は各 Media Overlay および Publication 全体の duration を含めなければならない(must)。Package Document は、各 Media Overlay が独自のナレーター持っているか、Publication 全体に指定された一人のナレーターを持っている時、narrator 情報を含んでもよい(may)。Package Document は現在再生中の EPUB Content Document 要素に適用される著者が定義した CSS クラス名を同様に含んでもよい(may)。

meta 要素が一つの Media Overlay Document に特有であるとき、about 属性はどちらを参照するかに使用する。about 属性のない meta 要素は Publication 全体とみなされる。active-class プロパティはつねに Publication 全体に適用されるとみなされるので、about 属性と組み合わせて使用してはならない(must not)。

次の例では、Media Overlay に関するメタデータを含む Package Document を示している。

<package>
    <metadata>
        …        
        <meta property="media:duration" refines="#ch1_audio">0:32:29</meta>
        <meta property="media:duration" refines="#ch2_audio">0:34:02</meta>
        <meta property="media:duration" refines="#ch3_audio">0:29:49</meta>
        <meta property="media:duration">1:36:20</meta>
        <meta property="media:narrator">Joe Speaker</meta>
        <meta property="media:active-class">-epub-media-overlay-active</meta>
        …
    </metadata> 
    …
</package>

> 4 再生の動作

> 4.1 Media Overlay の読み込み

EPUB Reading SystemPackage Document を読み込む時、それは EPUB Content Document に対応する Media Overlay を見出するために manifest item 要素の media-overlay 属性を参照しなければならない(must)。再生は目的の EPUB Content Document の開始地点に対応する Media Overlay の要素から開始しなければならない(must)。EPUB Content Document の開始は開始時もしくは Media Overlay の真ん中にある要素に対応してもよい(may)ことに注意されたい。Media Overlay Document が再生を終了する時、Reading System は(Package Document の spine に指定してある)次の EPUB Content Document を読み込むべきであり(should)、そして同様にそれに対応する Media Overlay Document のいずれかを提供し、読み込む。

> 4.2 基本的な再生

> 4.2.1 タイミングと同期

Reading System は順番に body 要素の直下の子をレンダリングしなければならない(must)。seq 要素の子は順番にレンダリングされなければならず(must)、そして最後の子の再生が終了した時に再生は完了する。par 要素の子は(それぞれが同時に開始して)並列にレンダリングされなければならなず(must)、そして全ての子の再生が終了した時に再生は完了する。body 要素の最後の子の再生を完了する時、Media Overlay Document の再生は完了する。

> 4.2.2 音声のレンダリング

Media Overlay の audio 要素を示されたら、Reading System は clipBegin 属性によって与えられるクリップのオフセットタイム(時間偏差)から開始し、clipEnd 属性によって与えられるクリップのオフセットタイム(時間偏差)で終了する src 属性によって参照される音声リソースを再生しなければならない(must)。以下の規則は守らなければならない(must):

  • clipBegin が指定されていないとき、その値は 0 みなされる。

  • clipEnd が指定されていないとき、その値は物理メディアの全体の長さとみなされる。

  • clipEnd が物理メディアの全体の長さを超えるとき、その値は物理メディアの全体の長さとみなされる。

ユーザーがコントロール可能な音声の再生オプションは、再生速度がピッチにより歪まないタイムスケールの変更を含めるべきである(should)。推奨範囲は半分から倍の速度である。

> 4.2.3 EPUB Content Document 要素のレンダリング

Media Overlay の text 要素が示されたら、Reading System は Viewport 内に出現する src 属性によって参照される EPUB Content Document 要素を確保するべきである(should)。CSS Viewport を持つ Reading System は再生中の EPUB Content Document 要素に、メタデータの active-class プロパティによって与えられるクラス名を付与するべきである(should)。逆に言えば、クラス名は要素がアクティブでなくなったとき、削除するべきである(should)。

メタデータの active-class プロパティは省略可能で、省略した場合、Reading System の動作は実装依存である。

> 4.3 EPUB Content Document との相互作用

> 4.3.1 ナビゲーション

Media Overlay は EPUB Content Document と密接に結合されているので、Media Overlay が再生している現在位置に基づき EPUB Content Document 内の位置を見つけるのは Reading System にはとても容易である。User が同期再生を中止し、出版物の別の場所に移動したら、同期再生はそのポイントで再生を再開しなければならない(must)。例えば、EPUB Content Document の特定のページ番号が適切な場所なら、そのとき、Media Overlay での同じ場所へ移動して再生が開始される。

これと同様のアプローチとして、EPUB Navigation Document 内のナビゲーションポイントを User が選択し、Media Overlay の再生を同期することも考慮しておく。Reading System はそのファイルを Media Overlay を読み込み、ナビゲーションポイントのターゲットの ID [XML] に基づいて再生を開始するために正しい位置を見つける。

note

Media Overlay Document は XHTML Content Documentspine 内に含まれているかどうかに関わらず、そのコンテンツの同期再生を提供するために Navigation Document と直接結びつけてもよい(may)。Reading System は EPUB Content Document 内の User が現在いる場所に Navigation Document の Media Overlay の再生の同期を保つべきである(should)。

> note

Media Overlay Document 要素は EPUB Content Document の例えば表組などの構造物と結びつけてもよい(may)。Reading System は、Media Overlay の再生は表組の列やセルの User によるナビゲーションと同期した状態を確保するべきである(should)。Reading System はまた、セルのコンテンツに先立ち対応する表組の見出しを再生してもよい(may)。

> 4.3.2 埋め込まれた音声と動画

Media Overlay が結びついている EPUB Content Document はそれ自身に埋め込まれた動画や音声メディアを含んでもよく(may)、それは Media Overlay 要素で指示されてもよい(may)。テキストや画像とは異なり、動画や音声メディアは本質的に時間を持っている。それ故に、Reading System が Media Overlay の記述により同期のレンダリングをするとき、関連付けられている EPUB Content Document は埋め込まれている音声や動画メディアの標準の再生の動作を上書きしなければならない(must)。

以下の規則は関連付けられている EPUB Content Document が参照している [HTML5]video または audio 要素のみ適用されることに注意されたい。つまり、規則は Media Overlay(例えば、src 属性を介して)内の text 要素によって指示されるそれらの要素のみ適用する。Media Overlay 要素によって参照されない埋め込まれたメディアはこれらの規則の対象ではない。

  • EPUB Content Document に埋め込まれたすべての参照されている音声と動画メディアは、そのパブリックな再生インターフェース(一般的に再生/一時停止、タイムスライダ、音量など)が無効になっていなければならない(must)。この動作は Media Overlay によって定義され予定されている再生シークエンスないしは、User のインタラクションもしくはスクリプトの実行が行うことになっている任意の再生動作を無効にするインターフェースを要求する。結果として、Reading System が再生モードにあるとき、これらを行う必要がある:

    • [HTML5]controls 属性によって定義された標準の動作を上書きする個々の動画/音声の UI コントロールを非表示にする。

    • JavaScript の音声/動画再生 API(すなわち、標準の Publication の動作の一部として記述されている)を起動することにより EPUB Content Document に埋め込まれているスクリプトが実行されるのを防ぐ。コンテンツの制作者は埋め込まれた音声/動画メディアの再生をコントロールするために専用のスクリプトを埋め込んで出版することを避けることを推奨する。発行された Media Overlay はスクリプトが可能にするカスタム動作からの干渉のいかなるリスクもなしに同期した表示の全てのコントロールを保持するすることができる。

  • EPUB Content Document に埋め込まれたすべての参照されている音声と動画メディアは、それらの"停止"状態に初期化され、それらのコンテンツの流れの中で0位置(おそらく [HTML5]poster 属性を使用して指定する画像)からいつでも再生されなければならない(must)。この要件は [HTML5]autoplay 属性で定義されている標準の動作を上書きする。

  • EPUB Content Document がアクティブになる時、EPUB Style Sheet の視覚を強調するルールは、その要素の src 属性によって参照されるコンテンツタイプにかかわらず適用する(例えば、メタデータの active-class プロパティによって定義された CSS クラス名は、ホストの EPUB Content Document の中で可視化されている動画と音声のプレーヤーのコントロールに適用されるべきである(should))。

  • テキストの断片や画像による Media Overlay の起動の標準の動作加えて、音声や動画の再生は(標準の [SMIL] のタイミングモデルに従い)記述されている Media Overlay 同期によって暗示される時間と一致して起動や停止をしなければならない(must)。2つの可能なシナリオがある:

    • Media Overlay の text 要素が par の親コンテナ内に audio の兄弟を持たないとき、参照される EPUB Content Document の音声や動画メディアは(text 要素のライフスパンの末端の場所)終わりまで再生しなければならない(must)。この場合、text 要素、すなわち親の par コンテナの潜在的な時間は、参照された音声もしくは動画クリップの時間である。

    • Media Overlay の text 要素が par の親コンテナ内に audio の兄弟を持っているとき、参照される EPUB Content Document の音声や動画メディアの再生の時間は audio の兄弟の時間によって制限されなければならない(must)。この場合、親の par コンテナの実際の時間は、text 要素によって指し示された動画もしくは音声メディアの時間にかかかわらず子の音声クリップの時間である。この動作は(全時間に到達する前より)早く終点の再生が埋め込まれた動画もしくは音声メディアに生じてもよく(may)、また、並列な Media Overlay audio の再生以前の終点は完了する(この際、最後に再生される動画のフレームが、親の par コンテナの末端を表示したままにするべきである(should))。この動作は、[SMIL]endsync 属性の動作を暗黙に引き継ぐ Media Overlay の audio 要素に相当する。

      さらに、Reading System は、音声出力が聴き手の要求に合致するよう調整できるように、それぞれ独立した音声トラック(すなわち、Media Overlay の audio 要素や EPUB Content Document 内に埋め込まれている音声もしくは動画メディアから)の音量のための User のコントロールを公開するべきである(should)。音声トラックを重複して持つのは、一般的にオーサリング時に関係しているのに注意されたい:コンテンツ制作者は通常、説明の目的のため動画トラック上に音声情報のレイヤーを加える。Reading System は任意の特定の方法で同時に音量レベルを処理することは必須ではなく、重複した音声の状態は制作段階で慎重に検討し取り扱うことを推奨する。

  • text 要素が Media Overlay 内でアクティブでなくなったとき、そして埋め込まれている動画や音声メディアを指しているとき、参照されているメディアは、それらの"停止"状態に初期化され、それらのコンテンツの流れの中で0位置(おそらく HTML5 マークアップ を使用して指定する画像)からいつでも再生されなければならない(must)。

> 4.3.3 テキスト読み上げ

audio 兄弟要素を含まない Media Overlay text 要素が対象となる EPUB Content Document 内部のテキストを参照する時、テキスト読み上げ (TTS) を利用できる Reading System は TTS を使用して参照したテキストをレンダリングするべきである(should)。

Reading System の適合性要件のように、対象となる EPUB Content Document の中に準備されたスピーチを関連付ける情報は Media Overlay レンダリングの一部として音声ストリームの再生に使用されるべきである(should)。Reading System のテキスト読み上げの適合性要件 [Publications30] を参照。

Media Overlay の text 要素のライフスパンは結びついている音声合成のレンダリング時間に一致する。text 要素、すなわち親の par 要素の潜在的な時間は、テキスト読み上げエンジンの遂行によって決定され、音声出力に影響するスピーチ速度、停止や他の韻律パラメータのような要因をオーサリング時に知ることできない。

> 4.4 読み飛ばし機能と回避機能

> 4.4.1 読み飛ばし機能

User は読書しながらサイドバー(sidebar)、脚注(footnote)、ページ番号(page number)または他の二次的な種類のコンテンツのような出版物の特定の機能をオンまたはオフにすることができる。この機能は読み飛ばし機能と呼ばれています。Reading System はユーザーがスキップ可能な機能のオプションを提供するかを決定するための Media Overlay 要素の epub:type 属性によって提供される意味情報を使用するべきである(should)。次の例では Reading System は、ユーザーに対ししばしば聞かされる煩わしい改ページ/ページ番号の通知のオンオフのオプションを提供するべきである(should)。

次の例では、改ページを持つ Media Overlay Document を示している。

<smil xmlns="http://www.w3.org/ns/SMIL" 
      xmlns:epub="http://www.idpf.org/2007/ops"
      version="3.0">
    <body>
        <!-- a paragraph -->
        <par id="id1">
            <text src="chapter1.xhtml#para1"/>
            <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="0:23:22.000" clipEnd="0:24:15.000"/>
        </par>

        <!-- a page number -->
        <par id="id2" epub:type="pagebreak">
            <text src="chapter1.xhtml#pgbreak1"/>
            <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="0:24:15.000" clipEnd="0:24:18.123"/>
        </par>

        <!-- another paragraph -->
        <par id="id3">
            <text src="chapter1.xhtml#para2"/>
            <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="0:24:18.123" clipEnd="0:25:28.530"/>
        </par>
    </body>
</smil>

次の例では、改ページを持つ EPUB Content Document を示している。

<html … >
    …
    <body>
        <p id="para1">This is the paragraph before the pagebreak … </p>
        
        <br id="pgbreak1" epub:type="pagebreak" title="234"/>
        
        <p id="para2">This is the paragraph after the pagebreak …</p>
    </body>
</html>

Reading System がユーザーに読み飛ばし機能のオプションを提供すべきである(should)ために、 [StructureVocab] から以下の用語抜粋が有益な参考資料として提供される:

  • sidebar

  • practice

  • marginalia

  • annotation

  • help

  • note

  • footnote

  • rearnote

  • pagebreak

Media Overlay はルートの smil 要素に epub:prefix 属性で定義して追加の語彙を使用してもよい(may)。epub:type 値に基づいた読み飛ばし機能のための Reading System のサポートが必ず行われるわけではない(should not)。

> 4.4.2 回避機能

回避する項目は、例えば表組、リストやサイドバーのような入れ子になった構造で、聞き手が飛ばしたい時に入れ子構造の直後の場所から読むのを続ける。回避機能は全ての種類の項目を使用可能または無効にするわけではないので読み飛ばし機能とは異なるが、(たとえば User が回避する前にコンテンツの一部を聞くことができるなど)そこからの出口を提供する。Reading System は入れ子構造の回避を許可するべきである(should)。Reading System は epub:type 属性(例えば glossary)の値によって入れ子構造の開始位置を決定しなければならず(must)、そして構造をスキップ再生し、その後にあるコンテンツの再生を再開するオプションを User に提供するべきである(should)。

次の例では、段落、用語集、別の段落を含む EPUB Content Document の Media Overlay Document を示している。回避機能をサポートする Reading System は用語集の割り込み再生や文書の段落を続けて再生するオプションを User に提供する。

<smil xmlns="http://www.w3.org/ns/SMIL" 
      xmlns:epub="http://www.idpf.org/2007/ops"
      version="3.0">
    <body>
        <!-- a paragraph, part of the regular document text -->
        <par id="id1">
            <text src="chapter1.xhtml#para1"/>
            <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="0:23:22.000" clipEnd="0:24:15.000"/>
        </par>

        <!-- a glossary, which is a nested structure -->
        <seq id="id2" epub:textref="chapter1.xhtml#g0" epub:type="glossary">
            <par id="id3" epub:type="glossterm">
                <text src="chapter1.xhtml#g1"/>
                <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="0:24:15.000" clipEnd="0:24:18.123"/>
            </par>
            <par id="id4" epub:type="glossdef">
                <text src="chapter1.xhtml#g2"/>
                <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="0:24:18.123" clipEnd="0:25:28.530"/>
            </par>
            <par id="id5" epub:type="glossterm">
                <text src="chapter1.xhtml#g3"/>
                <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="0:25:28.530" clipEnd="0:25:45.515"/>
            </par>
            <par id="id6" epub:type="glossdef">
                <text src="chapter1.xhtml#g4"/>
                <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="0:25:45.515" clipEnd="0:27:04.123"/>
            </par>
        </seq>

        <!-- another paragraph, part of the document text that comes after the glossary -->
        <par id="id7">
            <text src="chapter1.xhtml#para2"/>
            <audio src="chapter1_audio.mp3" clipBegin="0:27:04.123" clipEnd="0:27:59.000"/>
        </par>
    </body>
</smil>

> 付録 A. Media Overlays スキーマ

Media Overlay のスキーマは ../schema/media-overlay-30.nvdl である。

このスキーマは標準である。

> A.1 Media Overlays スキーマの使い方

このセクションは参考情報である。

このスキーマを使用した Media Overlay の検証は [NVDL][RelaxNG][ISOSchematron] をサポートするプロセッサが必要になる。

ただし、NVDL スキーマレイヤーは単独で埋め込まれた RELAX NG と ISO Schematron スキーマを使用して、2つのパスの検証することで代用できることに注意されたい。

> 付録 B. クロック値の例

この付録は参考である。

以下は許可されたクロック値の例を示している:

  • 5:34:31.396 = 5 時 34 分 31 秒 396 ミリ秒

  • 124:59:36 = 124 時間 59 分 36 秒

  • 0:05:01.2 = 5 分 1 秒 200 ミリ秒

  • 0:00:04 = 4 秒原文は“4 minutes”となっているが、“4 seconds”の誤りと思われる

  • 09:58 = 9 分 58 秒

  • 00:56.78 = 56 秒 780 ミリ秒

  • 76.2s = 76.2 秒 = 76 秒 200 ミリ秒

  • 7.75h = 7.75 時間 = 7 時間 45 分

  • 13min = 13 分

  • 2345ms = 2345 ミリ秒

  • 12.345 = 12 秒 345 ミリ秒

> 付録 C. 謝辞と貢献者

この付録は参考である。

EPUB は、出版社、ベンダー、ソフトウェア開発者、および関連する標準規格の専門家を集め、協力的な努力で国際電子出版フォーラム(International Digital Publishing Forum, IDPF) によって開発されました。

EPUB3 仕様は下に述べるリーダーシップにより2010年5月のメンバーシップによって承認された憲章の下で動作し国際電子出版フォーラム(International Digital Publishing Forum, IDPF)の EPUB Maintenance Working Group によって調整した:

ワーキンググループのアクティブメンバー:

IDPF Members

Invited Experts/Observers

より詳細な承認と EPUB の各バージョンへの貢献者については謝辞と貢献者 [EPUB3Overview] を参照されたい。

> 参照・参考

参照文献

[ContentDocs30] EPUB Content Documents 3.0 .

[MediaOverlays30] EPUB Media Overlays 3.0 .

[Publications30] EPUB Publications 3.0 .

[RFC3987] Internationalized Resource Identifiers (IRIs) (RFC 3987) . M Duerst, et al. January 2005.

[SMIL] SMIL Version 3.0 . D. Bulterman, et al. 01 December 2008.

[XML] Extensible Markup Language (XML) 1.0 (Fifth Edition) . T. Bray, et al. 26 November 2008.

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参考文献

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