5 ★ アクセシブルな電子書籍

アクセシブルな電子書籍を制作するための5つ星スキームを提案する。ここでは、各段階の星の例と、それに伴うコストや利益について説明する。

以下に、5つ星アクセシブルな電子書籍計画における各レベルの例を示す。

コストと利益

★ アクセシブルな電子書籍のコストと利益は何でしょう?

読者として、

  • ✔ パソコンやスマートフォン、タブレット、専用端末など、あなたが使い易いデバイスで読書できます
  • ✔ 電子書籍は部屋の中で購入でき、本を受け取るために玄関に行くことも、配達の人と会う必要もありません
  • ✔ ベッドやソファ、床など、あらゆる場所で寝転がったまま読めます
  • ✔ 見開きの状態を、手で押さえ続ける必要がありません
  • ✔ 片手で読書ができます。もう箸でポテトチップスを食べる必要はありません
  • ✔ 指が乾燥してページがうまくめくれず、イライラすることがありません
  • ✔ ページが眩しすぎる場合、画面を暗くできます
  • ✔ デバイス汚れても簡単に綺麗にでき、殺菌や消毒も可能です

出版社として、

  • ✔ 簡単に作ることができます
  • ✔ オンラインで販売できます

電子書籍であることがアクセシブルなのです。
しかし、電子書籍にすることはゴールではありません。電子書籍をもっとアクセシブルにできます。

★★ アクセシブルな電子書籍のコストと利益は何でしょう?

読者として、★ アクセシブルな電子書籍でできることは全て可能です。それに加えて、

  • ✔ 文字を大きくしたり、小さくしたりできます
  • ✔ 気にいった語句にマーカーを引けます
  • ✔ 分からない言葉を簡単に調べることができます
  • ✔ TTSが表のセルを読み上げます
  • ✔ 読みたい章へ簡単に移動できます
  • ✔ 画像の代替テキストを検索できます

出版社として、

  • ✔ まだ簡単に作ることができます

リフローはアクセシブルな電子書籍の理想形です。機械可読性が高く、読者が自分の望む方法で読書が楽しめるでしょう。
ただし、その電子書籍は独占的な技術で硬い殻に閉じ込められているかもしれません。

★★★ アクセシブルな電子書籍のコストと利益は何でしょう?

読者として、★★ アクセシブルな電子書籍でできることは全て可能です。それに加えて、

  • ✔ 特定のオンライン書店に限定されることなく、あなたの好きな場所で電子書籍を購入できます。

出版社として、

  • ✔ まだまだ簡単に作ることができます(その独占的な形式を作るために、オープンな仕様で電子書籍を制作してますよね?)
  • ⚠ 独占的な形式に対応するため、追加の修正が必要になるかもしれません

アクセシブルな電子書籍として完成と言ってもよいでしょう。選択肢の多さはアクセシビリティの重要な要素です。
でも、アクセシブルとはいえ、全ての人をサポートしているわけではありません。できること/できないことを事前に通知することはとても親切なことです。

★★★★ アクセシブルな電子書籍のコストと利益は何でしょう?

読者として、★★★ アクセシブルな電子書籍でできることは全て可能です。それに加えて、

  • ✔ 購入する前に、電子書籍のアクセシビリティ機能が分かります
  • ✔ 内容を理解するために必要な感覚や能力を知ることができます
  • ✔ 発光や音などで生じる危険を回避できます

出版社として、

  • ✔ クレームや訴訟を回避できます
  • ⚠ 電子書籍に含まれているリスクを全て把握する必要があります。数冊であれば容易でしょう。しかし、何百・何千冊になると大変でしょう
  • ⚠ 基本的なメタデータに加え、schema.orgを学ぶ必要があります

読者と出版社双方に大きな利益を生み出します。読者は読めない本を買いません。でも、少しの努力で読めるなら購入するかもしれません。その判断ができます。出版社は正しい情報を提供する真摯な対応で、多くのファンを獲得することが期待できます。
とはいえ、電子書籍の仕様としては十分ですが、アクセシビリティの仕様としてはもう少し努力が必要です。

★★★★★ アクセシブルな電子書籍のコストと利益は何でしょう?

読者として、★★★★ アクセシブルな電子書籍でできることは全て可能です。それに加えて、

  • ✔ 電子書籍を知覚し、操作し、理解する障壁が減少するでしょう
  • ⚠ 十分にアクセシブルですが、全ての人による利用を保証しているわけではありません

出版社として、

  • ✔ あなたの電子書籍の価値を最大にします
  • ✔ あなたの電子書籍は国際規格に対応しており、高い信頼性と競争力を持ちます
  • ✔ 印刷物を読むことが困難だった人が、電子書籍を手にするようになるでしょう。読書人口の拡大により収益が増大するでしょう
  • ⚠ 動画や音声が含まれている場合、代替コンテンツの提供には大きなリソースが必要になります

完璧です。これ以上ないアクセシブルな電子書籍になりました。読者は能力や環境に煩わされない読書体験を得、出版社は継続的なビジネスを約束する地盤を築きました。

免責的なもの

アクセシブルな電子書籍について、提言やアイデア、妄想・夢想は数多くあれども、いきなりそのような理想を達成できるほど、現実は甘くない。そんな泣き言を言っているから、電子書籍はアクセシブルにならないのだと非難されるかもしれないが、できないものはできないのだから仕方ない。

そうした現実を認めたうえで、たとえ蝸牛の歩みと呼ばれようとも、前進するため、このスキームを考えてみた。

なお、ここに記述したものは提言やアイデア、妄想・夢想の類であり、結果は保証していません。自己責任でご参考・ご活用ください。

元ネタ

5 ★ Open Data5つ星オープンデータ

クレジット

公開日:2017年4月11日
作成者:Wataru Yoshimura